DATES 干しナツメヤシ
イラクにフセインという独裁者がいて、砂漠の戦士は一握りのデーツで一日戦い続けることができると叫んだ。湾岸戦争で負けて別荘の穴の中に隠れていたが捕まった。たぶんデーツを食べて餓えをしのいでいたのだろう。
しつこい甘さとザラザラした皮が舌に残る。シリアのパルミュラが本場らしくて収穫された生の実が大きな倉庫に山のように積まれていた。道端ではオバさん連が籠をならべて通りかかる車に売っている。枝つきの一房を買ったが一小隊まかなえるほどを残して捨ててしまった、我が家の評判は悪い。
デーツの国は食事も質素だ。シリアやアラビアの食堂はどこも肉は鶏、飯はケチャップ・ライスだけ。コックは鶏のスープで炊いていると胸を張るのだが不味い。豊かな食生活ができるのはモロッコだけだ。しかしマラケシュで砂嵐にあいホテルから出られなくなった。町中のすべてのものを薄黄色の砂漠からきた暴風がもぎとろうとする。パーム椰子、手のひらという意味だそうだが根こそぎ倒されパームが虚空をつかんでいる、腕相撲なんかするのがいけない。しかしデーツはこの椰子には実らない。稲妻が光り停電になってエアコンと冷蔵庫が切れる、じっとしているしかないがビールがぬるくなっていく。暑くて寝られるものではない。朝飯はカチカチのパンと薄いスープ、ジャムとデーツだけ、料理ができないのだから仕方ない。
アメリカにもパームスプリングスという町がありお洒落なコテージの屋根に椰子の葉があしらってあったりする。ニッパ椰子ともいうが同じものだ。サンデッキで冷えたビールまではいいのだがメニューはチップスにピザ、ホットドッグにハンバーガー、その量の多さ、毎日ではうんざりする。この国の兵士はデーツでは戦わない。