EPILOUGUE
帰る日があるのが旅行だ。行き先知れずになった友だちもいる、異国で今でも酒と薔薇の日々を送っているだろうか。飛行機や船、列車や車で運ばれていくと違う匂いの毎日を過ごす。ただいまと言って家に入ると暮らしの匂いに包まれ常の毎日になる、安心するようなさびしいような一瞬だ。
ちょっと気取って言えば「年月は人を通り過ぎていく、まるで旅をするように思い出だけを残していく、だから…」旅をするというのは退屈しのぎや気まぐれではない、別の時間の流れにひょいと乗りかえるだけのことだ。後押しするのはそぞろ神、道祖神まで一緒になって、いたずら好きな道の護り手だ。
松尾芭蕉は仮の庵しか持たなかったが、私の帰る所は決まっている、家族と共に過ごす場所だ。妻とのプロポーズの約束を忘れていない。暇を作って旅に出ようね、刻々と流れていくそんな永い年月を過ごしてきた。
写真はイギリスのパブ
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