スペイン

カーニバル

 扮装で目立ったのが白熊に扮したグループ、何かニュース性のある出し物なのだろう。
一団体ごとにフロートと楽団と仮装の人々という構成で進んで行く。フロートはトラクターとか乗用車が引っぱっていく。パレードの先頭は「高足」、竹馬のような棒の上に立って肩を組んで歩いていった。次がブルーのシルクハットとタキシードで決めた子どもたちを乗せたフロート、次のフロートにはピンクの子豚の着ぐるみの子どもたち、トランプのキングとクイーンの扮装で手に杓を持つ大人と子ども、派手な衣装のピエロ(娘)と猛獣使い(熟女)胸が露わだ。様々な動物の着ぐるみの一団はプラカードにズーと書かれている。豪華な衣装に坊主頭のエジプトのファラオたち、花一杯の塔の上に鳥かご(中に顔がのぞいている)頭に縄文土器のような赤い被り物をつけた炎の女たち。人気マンガらしい毛脛のお婆さんは尻をまくってパンツを見せている。
カーボーイの格好をした男女が車椅子で行く。手にピストルを持った介護士が付き添っている。車椅子にも乗れない老人はインディアンの扮装をして手押し車の檻の中に座っている。自閉症か認知症か表情のない人ばかりだ。障害のある人や老人を仮装させてパレードに参加するのは人間らしい振る舞いで人格を少しも損ねていないと思うのだが、このユーモアが日本で通じるかどうかだ。
行列の最後はゴート族のお姫様らしい、古代衣装の少女が黒馬で行く。皆は3時間かけて1キロ半ばかり行進するそうだ。
 見物人はグループに属さなくても仮装して、特に子どもは豪華な衣装をつけている。パレードが終わると広場では歌謡ショーとダンスがある。街中に酒は見当たらない、飲んでいる人も多いのだろうが人前の酔っ払いは慎むのだろう、宗教行事ではある。


毎年7月の1週間 サンフェルミン祭  牛追いは7日間毎朝

 他のヨーロッパの祭り同様これも異教時代から続いているそうだ、たどれば地中海世界の牛の崇拝に戻るだろう。白いズボンにシャツ、赤いスカーフがこの祭りの装束、遠目にも鮮やかだ。
 朝、もう人がつめかけている。いくつもある通用口の門が閉じられると厳重に仕切られた街路に牛が放たれる。牛より速く走らなければ蹴散らされる、命が惜しければ柵の外側から手を延ばせば走り去る牛の感触がある。一行、牛と人ははあっというまに走り抜けて闘牛場になだれこむ。入場券はとっくに売り切れているがダフ屋がうろうろしている、開場間近で諦めかけているダフ屋の足元を見れば原価に近い値段で買える。
 ここはスペインだがナヴァラ人はカスティリア人のように牛を殺さない。角をつかんだり背を叩いたりとちょっかいを出して自分の勇気を見せればいい。しかし巨大な闘牛場は大いに盛り上がっている。
 町中のステージでは民俗舞踏をやっている。世界帝国スペインが植民地からもたらした民俗舞踏は多様だ。中南米、南アジアの各地の人々が華やかに舞う。
 パレードが始まる。大きな飾り帽子を被ったセニョールが飾り立てた馬の胴体と首を腰につけ陽気に跳ねまわる。巨大なハリボテはスペイン支配化の諸国の王と王女だそうだ。よたよたと歩くがくるっと回るくらいの動きはある。それより小さい頭だけがハリボテの人形は見物の子どもたちに悪さをする。棍棒で追いかけたりそっと後ろから近づいて脅かしたりする。
 夜になると花火が上がる、芝生の上はパーティ状態で酔っ払いが騒いでいる、たぶん夜明けまで続くのだろう。朝になると軒下から鉄道駅の通路までたくさんの人がゴミと一緒に散らばっていた。
 赤いスカーフは観光案内でくれるので白っぽいTシャツさえ持っていれば祭りの一員になることができる。