タイ

ラーマーヤナ舞踏 大学祭


 バンコクの王宮そばの裏通りを歩いていたら小さなポスターが目に入った。文字は読めないが写真と日時は分る、今日、この後すぐの時間だ。通行人に聞きながらたどりついたのは大学のホールでラーマーヤナ舞踏の発表会だった。ステージ前には師匠らしい老人と劇評家らしい老人が席についている。
 ラーマ王子とシータ姫、悪のラーヴァナ、善のハヌマーンとガルダの織り成す活劇だ。
ストーリーは一貫している、それがマハバラタとの違いだ。エピソードの連続で場面を構成するマハバラタは平家物語に近い。
 仮面をかぶる役と隈取をする役がある。女性役は美しく化粧する。タイの舞踏は手の動きが美しい、これはインド伝来だろう、しかし目の動きで心情を激しく表現することはしない。叙事詩を踊るよりも踊りの型を美しく見せることが目的だからだろう。
 学生はよくがんばっていた。ラーマともシータとも同世代の若者たちだから、甘美でしっとりとした場面も善と悪が激しく立ち回る場面も無理なく自然に演じている。
 最後に師匠と劇評家がコメントした。たぶん適切な評価なのだろう、役者たちは素直にうなずいていた。