釜山海雲台ビーチ どんど焼き 旧暦1月15日
浜辺に杉の葉を積み上げた巨大な塚が立っている、日本の左義長と同じだ。大きな凧に安家泰平、国泰民安などと書かれている。小さい凧を売るテントがある、塚に並べて一緒に燃すようだ。正面に祭壇が設けてあって、豚の頭と果物が供えられ、参詣者がマッカリを椀に注いで捧げている。紙袋を持った人が列をつくり塚の中に入っていく。木組みで支えられた中にはぎっしりと紙袋が吊るしてある。服やハンドバックや菓子や何か、故人の品物とか燃やしたい物なのだろう。杉の葉の匂いが芳しい。
カンガンスルレの練習をしている。入場から輪になって踊り終わって退場するまで、先頭の二人がリーダーであとは素人だ、動きと顔つきが違う。
巨大なスクリーンが設置されていて照明音響の装置が並び、何台ものカメラで祭事を映しだすようになっている。聖火台が設けられ、そばに大きな来賓テントがある。
小雨がぱらついてきた。昼食にする。カキの店らしいあてずっぽうに指さしたら石焼きビビンバとスープが出てきた。どちらもたっぷりカキが入って熱くて辛くて暖まる。
行列が始まる。絵に描いた乙姫様そっくりの衣装で三人の侍女を従えている。古式の軍楽隊と農楽隊が行進する。干支の辰年にちなんで龍のはりぼてが行列に加わっている。チャルメラや銅鑼をけたたましく鳴らしながらアリランを奏でている。
人が集まり何千人かになっている。火をつけるのは月の出の時と決まっている、東の海上に月が出ると左義長が燃え上がる、今日は雨で見えない。
聖火が燃え上がる。長々と来賓が紹介されて、次々に挨拶がある。大スクリーンにアップで映される。そういえば選挙が近い。来賓が白い上っ張りを着て塚の前に集まる。祭主という感じの老人が高々と祭文を詠む。節ごとに農楽隊が囃し立てる。白衣の来賓はムシロの上にひざまずいて拝礼をする、それも長々と続く。ようやく終わって荘重な音楽が流され塚に火がつけられると曲が歌謡曲に変わった。たちまち灰色の煙が塚を幾重にも巻き炎が合間にチラチラと見える。若い警官たちがロープを張って警備しているのだが、来賓が知人を火のそばに連れ込もうとすると、一瞬不快な顔になってロープをゆるめる。紙包みを燃してくれと差し出す人がいた。30メートルの長投、包みは見事に火の中に入る、たいした腕力だ。
支柱が焼け落ちるとカンガンスルレが始まる。これは地元の人にとっても見所らしい。
舞台の上で低い調子で歌い始める。カンガンスルレ、カンガンスルレと。戦争に結びつけると李舜臣将軍、日本軍を混乱させるために山上で火を焚いて女たちに踊らせたという。もともとは秋夕の満月の夜の女たちの楽しみだったという。円を描きながら踊る。流れが変わっていく。一番前の娘が先導して円の中に隣の腕をくぐり、円をくるくる巻きながら次々に全員入っていき、今度はほどくように出て行く。別に決まった順序があるわけではなく、興にのってということらしい。歌詞も本来は即興だという。古代の馬韓に発し、種まきと収穫の踊りだった。名前は19世紀に珍島に流されたソンビのチョンマンジュが強強須来と名づけたという。それまではタンム(円)踊りとか満月踊りとか、月に願をかける踊りだったそうだ。
江陵端午節 旧暦5月5日前後1ヶ月
いわくつきのユネスコ世界遺産
端午節は韓国発祥の民俗行事だと宣言したので中国が呆れてすぐに抗議した。しかし元祖屈原の地にはチマキとペーロン舟しか残っていない、締まらない喧嘩になった。韓国はユネスコ世界遺産を渇望してハングルまで登録した。
ムーダンの祈り
城隍神の祭りなので巫女ムーダンは仏やキリストに気兼ねなく一番いい場所に陣取れる。天井には色鮮やかな灯篭、正面には造花と豚の頭がいくつも並ぶ盛り物、五色の布をはためかせながら歌い踊り語り大活躍だ。年配の地味な服装のオバさんたちは託宣係だ、悩み事、相談事、死者の現況、その他なんでも問えば答えてくれる。護符に火をつけて飛ばす、浄められ願いがかない死者が満足する、火がヒラヒラと飛んでいくと待ち構えた若い男が掃除機で吸い取る。
相撲シルム
柔道の帯くらいの幅のフンドシをTシャツ、ジーパンの上に結んで飛び掛り、押して投げて相手を転ばす。相撲を取るだけで儀式めいたことは一切ない、アナウンスも勝った負けただけだ。女同士も戦う、勝ち抜いているのは運動神経の鋭い足腰の強い娘のようだ。100円ショップのような賞品が積まれている。
ブランコ
チマを着た娘が乗っている、とても優雅だ。恋人と一緒に乗ってもいい。5メートルほどもある長い綱で振幅は1往復数秒かかる。うれしそうに得意そうに乗っているが手がすべればかなりのダメージを受けるだろう。一応キャーキャー言っているがチマは余裕で翻っている。
投壷
口の細い壷に矢を投げ入れるお座敷遊びだ。熟練を要すわりにうまく壷に入っても感動が薄い。言葉通り投げやりな気分だと的中したりする。
綱渡り
かなり太い綱の上を跳んだり走ったりしりもちをついてみせたりする。綱を股ではさんで跳躍するのはきっと丈夫なサポーターをつけているのだろう、インド人もまったく同じことをやっていた。
農楽・ノリ、田楽
これも全国共通だ。チャルメラ、チャンゴ、鉦がけたたましい。輪や渦を描いて固まったり広がったり演者のほうが楽しんでいる。苗代、田起こし、田植えと延々と稲作作業の予行演習をする。牛の面をつけたり孕み女が出てきたりして日本の田楽・田遊びとあきれるほど同じだ。もちろん源流はこちらだ。
舞踏
もとは宮廷のものなので動きは洗練されているし舞台の展開もいい。ただ観光客を意識するのでバリエーションに乏しい。同じような衣装、同じような顔で舞い踊るのはAKBとかのルーツだがファンは少ないようだ。
仮面劇
端午節にゆかりの仮面劇が二つ、ただ年中、どこでも演じているので本来の意味は知らない人が多いだろう。
最初にネズミのような木の幹のようなチャンジャマリという二人が出てきてぶつかりあってこけたりする。お腹に乗ろうとするのは性行為だそうだ。服にぶらさげているのは海藻、ずんぐりしているのは孕んでいるから、すべて豊作豊漁祈願だ。ヤンパンと女がいちゃいちゃしているとシシタクタギが出てきて奪い取ろうとする。
黒衣にあばたの悪相の面、包丁を持っている二人、これは疫病神なのだという。激しく跳躍してずいぶん戦うのだが最後にヤンパンが勝って女を取り戻す。回復したということだろう。
いくつものブースでこんな演技をやっている。プログラムは予定通りで次の団体が待ち構えている。ただムーダンは朝から夕方までがんばり続ける。一年の収益をあらかた得るのではないかと思わせるほどだ。
釜山朝鮮通信使祭り
水原華城祭り