メキシコ


トルーカのロウソク行列

 有名な骸骨祭りではなかった。
 メキシコの渋滞、1,2時間は余分にかかる。太い道の三叉路、五叉路に車がひしめきあいながら入ってくる。メキシコシティは盆地なのでどの方面に行くにも山を越える。峠に立つと町は紫色によどんでいる。セキが出て頭痛がする、高地のせいでもある。
 テオテナンゴの遺跡は村に突き出した台地の上にある。マトラツィンカ人部族がケツアルコアトルの神殿を作ったのが最初だ。今も同じ部族の人が住んでいるという。
近郊のソカロという町で祭りがあった。イルミネーションが輝き、舞台ではローソク行列の子どもや若者が扮装して紹介されている。女の子は赤いコート、天使もいれば悪魔もいる。男の子は少ない。ブラスバンドは下手だった。夜とともに急激に気温が下がった。翌朝、フロントを見たら電熱ストーブを貸してくれたのだ、気がつかなかった。
 メキシコ人は骸骨が好きだ、たぶんインカの昔にさかのぼるのだろう。キリスト教も骸骨が好きだ、人骨教会があちこちにある。チベット仏教も好きだ、人骨の笛を吹き人骨で太鼓を叩く。こちらはどこまでさかのぼるのだろう。
 ハロウィンが流行って骸骨も馴染みになったが本場はまた格別だ。世界の祭りもネットで検索するとかなり確実な情報が得られるようになったが信用して飛行機で飛んでいって肩すかしを食うことがある。縁がなかったとあきらめるほかない。
 


グアダルーペの聖母祭

 世界に伝播したカトリックと言えどメキシコまで来ればアステカ文明の影響を受ける。グァダルーペの聖母はバチカンが最初に認定した奇跡だそうだ。ちなみに次はフランスのルルド、次はポルトガルのファティマ、公認されているのはこの三件だけ。ディエゴという男の親戚の病気を治したという、アステカの女神の信仰がその前身におるのだともいう。
 巨大な教会の広場に古代アステカの戦士たちが集ってくる。ディエゴはアステカの農民だったそうだ。当時の宣教師たちはこういう世界に跳びこんでいったのかと思うとその勇気を讃えたくなる。同時代の日本も戦国のすさまじい時代だった、そこにも宣教師は乗り込んできた。 
 聖母画像は褐色の肌をしている。まったく色あせないというのが信仰を深めている。しかし教会は地盤沈下で傾いてしまった。そこに奇跡はないからコンクリート造りの新聖堂が建てられている。